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「君に届け 短編」
君に届け 短編(高校卒業後以上の未来もの)


春雷(君に届け 短編 未来:新婚さん )

2011.04.07  *Edit 


-1-

「うわっ」「きゃっ」

闇を一気に照らすような光とその後にすぐ轟音が夜空に響いた。
そして数秒後に家中の明かりがふっと消えた。

「停電…?」

爽子がぽつんと呟くと、爽子の手を温かい手が包んだ。

「ん、みたいだね。少し、目が慣れるまでじっとしてた方がいいよ。」

柔らかくて低い大好きな人の声に爽子の頬がぽっと染まった。

(わぁ、絶対私、まっかだ。…翔太君にみえなくてよかった)
暗闇に軽く感謝しつつ爽子はそう心で呟いた。

つきあって何年も共に過ごし、さらに結婚して何ヶ月も立つのに、
いまだに夫のふとした仕草や行動にどきどきと心臓が早鐘を打ってしまう。
爽子はなんとなくそれが気恥ずかしい。

もう少し落ち着いて、夫の出す無意識フェロモンに慣れられればいいのにと思うのだが、
その願いはいつまでもかないそうになかった。

(だって、大好きすぎるんだもの)

爽子は赤くなった頬をさますために夫が握っていない方の手でぱたぱたと自分を扇いだ。

「ん?どしたの?」
「うっううん、なんでもないのっ…あっそうだ!」

爽子はふと思いついてするりと夫の手から自分の手を抜いた。
そしてそろそろと手探りで何かを探していたが、すぐに嬉しそうな声で言った。

「あ、あった!」

その声のすぐあとにぽうっとろうそくの明かりが灯った。

仄かな明かりの中で爽子が微笑んだ。

「こんなこともあろうかと。」

相変わらず、何事に対しても準備万端の妻に翔太はくすっと笑った。

ゆらゆらと揺れる橙色の明かりが爽子の白い肌に映えた。
くりっとした猫のような瞳の中にも橙色の光が灯る。
柔らかな微笑みを作る薄い唇もほんのり明かりを反射して艶めいて見えた。

翔太はこくっと喉を小さくならし、妻にぼうっとみとれた。
つきあってから何年も共にすごし、結婚してから何ヶ月も、もっと共に過ごしたけれど、
未だ愛する人を息を詰めて見つめてしまう。だって時がたつにつれ爽子は綺麗に艶を増していく。

(毎日惚れなおしてる気がするなあ)

心の中だけでそう呟いたはずなのに妻がそれに呼応するように頬を染めた。

さああっと雨の降る音がした。
「…あ、降り出したみたいだね。」
しっとりとした水の気配が濃くなった。
その気配に混じって沈丁花の甘く爽やかな香りが漂った。

「花の、いい匂いがするね。」
「ふふ、大場さんが分けてくれたの。」

爽子は草花や薬草の趣味などですっかりご近所の年輩連中にとけ込んでしまった。
その中の一人の名前を挙げ、爽子は今度お礼にケーキ焼こうかなと嬉しそうに言った。

静かな雨に閉じこめられた、芳香に満ちた空間。
傍らには愛しい人。
春の雷がもたらしたおもいがけない贈り物に翔太は幸福のため息を漏らした。

その時無粋な電灯が点いた。
「…あ。点いたね。」
そう言って爽子はろうそくをふっと吹き消そうとした。
しかしそれを夫に優しく制せられた。
「え?」
にっと笑って夫はそのまませっかく点いた電灯のスイッチも切った。

「…もう少しこのままで。」

爽子は白い頬をもう一度桃色に染めると小さく微笑んだ。
「…うん。」
ゆらゆら揺らめく小さな炎をみながらどちらからともなく二人は唇をあわせた。

ゆっくりと爽子から離れた翔太はそのままふっとろうそくを吹き消した。
「翔太君?」
いきなり明かりを奪われて爽子は不思議そうな声を出した。
少し目が慣れてくる前にもう一度夫の優しい口づけを感じる。
「ん…」
「暗いからさ、これだけ近づかないとよく見えないね。」

暗闇の中互いの愛しい姿だけが目の前に在った。
やんわりと口づけが交わされ、やがてそれは熱っぽい湿り気を帯びていく。

「…いい?」
熱い息をこらえながら翔太が問うと返事の代わりにしなやかな腕がするりと回された。
濡れた唇が物語の続きをねだる。

(闇の中、君を辿るのも悪くない)

翔太は夜目にも白い爽子の肌を静かに辿りながらこっそり微笑んだ。
(終わり)

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