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「君に届け ヤン早シリーズ」
君に届け ヤン早シリーズ0.5


Under the Rose2(君に届け ヤン早シリーズ0.5)

2008.06.14  *Edit 

君に届け ヤン早シリーズ1(夕立)の少し前 爽子視点後編

----------2----------

息が切れるほど駆け続けて気が付くと野薔薇がそこかしこに咲く綺麗な場所に来ていた。

爽子は一本の木の枝に座る少女に気が付いた。

しなやかで小柄な身体にふわふわの紅茶色の長い髪。

大きなキラキラした瞳に音がしそうなほど長い睫。

ピンク色の唇に健康そうな血色のいい頬。

まるでフランス人形みたいなその姿は

まさしく爽子の理想とする少女の姿そのもので爽子はしばし見惚れた。

『何か用?』

少女の頭の上の耳がぴくぴくと不機嫌そうに動いた。

…耳?

違和感を感じてよくよく見るとふわふわの髪の上にぴょこんと可愛らしく猫の耳が付いている。さらにしっぽも意思を持ってひょいひょいと動いていた。

爽子は少しビックリしたが、ウサギの少年がいるぐらいだから猫の少女がいてもおかしくはないのだろうと思い直した。」

『あの、ウサギさんを見なかった?』

猫の少女はぷいっとそっぽを向いて不機嫌そうに答えた。

『うっざ。』

可憐な少女の唇から出たとも思えないそんな台詞に驚いて爽子は思わず後ろに誰か隠れてるんじゃないかと背伸びをしてみた。(誰もいなかった)

少女は呆れたように鼻をならした。

『だいたいなんでアンタにそんなこと教えなきゃなんないの。』

他力本願もいいかげんにしてよねと顔をにゃごにゃごと撫でながら続けた。

それもそうかと爽子は思い『自分で探します…』とトボトボと歩き出した。

さてどう行こうかと周りを見渡した爽子にチェシャ猫の少女は意地悪そうに笑った。

『どっちにいけばいいかわかってるの?』

『えっと、どっちにいけばいいんでしょう』

『どっちに行きたいのあんた。』

爽子はどうにも答えられず言葉につまった。

チェシャ猫の少女はさらに面白そうに笑った。

『じゃあどこにも行かなくていいんじゃない?』

『でもウサギさんが』

爽子はどうしてもウサギを見つけねばならない気がした。

しかしチェシャ猫はその言葉には答えずくすりと笑うとすぅっと消えてしまった。

『まあその足じゃどこにも行けないわね、どっちにしても』との言葉を残して。

足…?足元をみると自分の足には薔薇の蔦が絡まって動けない。



どうしよう これではウサギさんを追うどころではない。

動く事すらできないなんて。

爽子は哀しくてぽろぽろと泣き出した。



その時ふわりと周りが明るくなった。

そこにはテーブルがあって薄茶の髪にシルクハットを深々とをかぶった少年がお茶を飲んでいた。さっきのウサギと同様に端正と言っていい顔立ちで、やや眦の下がった眼が華やかさと愛嬌を添えていた。

『泣いてる女の子がいるとお茶が美味しくないんだよね。』

少年は爽子にお茶を差し出した。

『これでも飲んで泣きやみなよ』

『あ、ありがとう、でも足が動かないから座ることもできません。』

『困ったね』

彼はたいして困ってる風でもなく寧ろ楽しそうにうそぶいた。

『今俺は女王のパイを盗んだ罪で首を切られそうなんだ。君が代わりのパイを作ってくれたらその足の薔薇を切ってあげるよ』



呑気に話してるけどそれはものすごく大変な事なんじゃ!



『つ、作ります!』

爽子は勢い込んで言った。

でも道具も材料もないのに。それにこの足じゃ…と爽子が戸惑っていると周りにキッチンが現れた。

『アシスタントもつけるからさ』

シルクハットの少年のその言葉にきょろきょろと見回すとさっきのウサギ少年がエプロンをつけて爽子の側に立っていた。でも彼は爽子を見ても知らん顔をしている。

『ねえ、さっき会ったウサギさんだよね?』

ウサギの少年はちらりと爽子を見たが首をかしげた。

『さあ?』

爽子はその言葉にぎゅっと胸が痛んで泣きたくなった。

でもパイ作りがある!と唇を噛んで涙を堪えた。

ウサギはそれを見て微かに笑った。

それは少し意地悪気な微笑だった。

『俺が忘れてるんじゃないよ。君が思い出してくれないんだよ』

その言葉に問い返そうとするとウサギにパイ作りを急かされた。

『早くパイを作んないと あいつの頭が胴体から離れちゃうよ?』

そんな物騒な言葉を聞かされてもシルクハットの少年は全く気にしない風に笑ってお茶をすすった。

『3月のウサギは頭がおかしいからね。本気で聞いちゃダメだよ。』

爽子は急いでパイを作ろうととりかかった。

パイの材料は揃っていたから手順どおりにパイを作っていく。

動かなきゃ行けないところはウサギに手伝ってもらった。

外側はできてきたので中に詰めるクリームを作る作業に移り、生クリームと砂糖をさっくりとまぜていくとウサギが長い耳をぴょこんと動かし愛嬌たっぷりの笑顔を見せながら言った。

『味見させて?』

爽子は戸惑いながらもクリームをスプーンですくって差し出した。

しかしウサギはにっと笑うと

『そっちじゃなくてこっち』ぱくんと爽子の指をくわえた。

『ひゃんっ…!』

爽子の奇妙な叫び声を気にも留めずウサギは柔らかく赤い唇で爽子の白い唇を食んでいく。

ねろんと指をしゃぶられ、柔らかい舌が指に絡みつく感覚に背筋がざわざわりと騒ぐ。どこか甘い粘液に支配されるような感覚に爽子は赤くなった。

ウサギはそんな爽子に掠れたような声で囁くように言った。

『いい匂い。それにすごく甘い。』



ウサギはとろりと指を舐りながら爽子を見上げて

さらに甘くうっとりと囁いた。



『指全部にお菓子の甘いにおいが染みついてる…』

白い指にウサギの赤い舌が絡まる様を見てると

なにかとてもいけないことをしているようなそんな気分になる。

爽子は罪悪感とぞわりと背筋をかける甘い痺れの誘いを畏れて

手を引こうとするがウサギの真っ直ぐな熱っぽい目に絡め取られて動けない。



『-逃げないで。俺から逃げないで』



息すらするのを忘れてウサギの大きいハシバミ色の瞳をみつめていたら

シルクハットの少年の茶化すような声がした。

『3月ウサギの言う事は、いつもたわ言ばかり。

イカレウサギの言う事なんて聞いちゃいけないよ。』

その言葉を聞いたとたん足元の薔薇の蔦がにゅるにゅるとのびて爽子の手と足を縛った。

棘がちくちくと全身を攻撃してくる。

動けないでいる爽子にウサギは哀しそうに笑った。

『やっぱり、逃げるの?』

否定しようとしても首すら振れない。

口の中にも薔薇の蔦が触手のように入り込んで苦しそうにもがく爽子は話せない。

気が付けばウサギの熱病めいた瞳が眼の前にあった。

その熱から逃れるようにぎゅっと眼を閉じたら

柔らかく熱いものがまぶたに触れた。

眼を開けたときにはまた熱病めいた瞳が爽子を見ていた。

痛みを堪えるような苦い笑みがウサギの口元に浮かんでいる。

その口からゆっくりと言葉が漏れた。



『これは忘れて。薔薇の下だから。』



薔薇の下…どこかで聞き覚えのあるフレーズに爽子が一瞬気を取られた時

薔薇の蔦は全部外れて爽子の足元がぽっかりあいた。

そしてあっという間もなく体は自由落下していく。



はっと眼を覚ますとやっぱりそこは麗らかな初夏の公園だった。

何かとても不思議な夢を見た気がする。

何故かかぁあっと頬が熱くなった。

そしてふ、と一つの言葉が胸の奥によみがえる。

『忘れて。薔薇の下だから』

誰がこう言ったんだっけ…。

爽子はそれはどうしても思い出せなかった。

代わりにその言葉のもうひとつの意味を思い出した。



Under the Rose …秘密…



無意識のうちに白いたおやかな指がそっと目蓋を押さえた。

爽子は身のうちにこもるじりじりとした熱の正体をつかめないまま初夏の陽射しに溜息をついた。



学校では相変わらず風早との間に微妙な薄い紙が挟まっているような関係が続いていた。

そっと想い人に視線を寄せると相変わらず人の中心で笑っている。

爽子はまた無意識のうちに瞼に指を置いていた。

鼻腔というより脳の奥で薔薇の香を嗅いだ気がした。

「ん?どした爽子。虫にでも食われた?」

千鶴のそんな言葉に爽子ははっと指を離しなんでもないよ、と首を振った。

そして昼食のため裏庭に向かう千鶴とあやねにおいつこうと少し早足で歩いていった。



風早はその後姿にちらりと目をやり、誰にも気付かれないように溜息をついた。

その時友達のひとりが風早が何かを握っている事に気が付いた。

「何持ってんだ?」

すっとそれを隠すと風早はにこっと笑った。

「別に。」

隠すなよーと言う友達も風早の柔らかな拒絶の空気に鼻白み別の友達との会話に戻っていった。

「飯くおーぜ飯」

誰かのそんな台詞に呼応してクラスの面々は散っていった。

人の少なくなったクラスで風早は隠していたものを掌を開いて見た。

そこには小さな桃色の折り紙に包まれた白い野薔薇の花びら。

風早はそれを切なそうにみつめ、眼を閉じるとそっと唇に押し当てた。

(end)

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