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「カプ注意:君に届け 金糸雀シリーズ(健人×爽子)」
君に届け 金糸雀2 月夜の海に浮かべれば(健人×爽子)


月夜の海に浮かべれば~サイド風早~

2010.02.13  *Edit 

-1-


風早はすべて見ていた。

三浦と爽子が心を合わせる様を。

そして愛しさで窒息しそうだった少女の白い手が
かつての恋敵の背中に愛しそうに回されたのを。

風早は無意識の内にぎゅうっと胸を押さえた。


風早は爽子と別れたその後彼女を振り切るように、すぐに告白してきた女と付き合った。
爽子と違いその子はすぐ体さえ許した。

温かな体と快楽とで満たされる心もあるとそれで知りはしたのだが、
その熱は身を離すとすぐに潮のように引いていった。

抱いているその瞬間の熱情を愛だと思い込もうとしても、どうしても支配される空虚感に
目を瞑る事ができずに、短い恋は終わりを告げた。

そんなことを数回繰り返したあと、風早は恋愛に対する熱情をすっかり失っている自分に気が付い

た。

あんなに恋愛に対してー爽子に対して怯えていたのに。

爽子が欲しくて欲しくて全部欲しくて喰らい尽くしたくて世界に二人だけじゃないのが苦痛でしか

なかった。
その破滅的な熱情に爽子が怯えていたことを風早は知っていた。
けれど本当に怯えていたのは風早の方だったのだ。

爽子を求めれば求めるほど 爽子の笑顔は消えていった。
世界で一番幸せにしたい人を自分が一番追い詰めていた。
それでも爽子は必死に風早を受け入れようとしていた。

その優しさが怖かった。
自分の熱が爽子を燃やし尽くすことが、爽子がそれをも甘受しそうなことが怖かった。

だから、爽子の口の端に別れの言葉が浮かんだ時身を引き裂かれそうな痛みの中に
確かに安堵を覚えもしたのだ。

けれど、刹那の恋を繰り返すうち、何をあんなに怯えていたのだろうとバカバカしくなった。

少しの笑顔と、愛想と、甘い言葉で簡単に恋は手に入るじゃないか。
痛みを癒やす刹那の温もりが欲しいときはそれを差し出せばいいんだ。

あんなに綺麗で、眩しくて、-そして絶対手に入らない幻なんてもういらない。
…もう二度と求めない。

ー風早を侵食した闇はいまだ深く彼の心を包んでいた。

爽子を見かけたのはそんな刹那の恋の小休止の時だった。
少し思いつめたような顔をしていたのが気にかかったけれど
声をかけるような真似はできなかった。

ただでさえ、別れた当時は嫌な噂が流れたのだ。
これ以上爽子に関わることがいい事だとも思えず、そして自分自身がどうしても爽子と向き合うの

が辛かった。
風早の中でいまだに生々しく傷は血を流し続けていたからだ。

しかしそのすぐ後、食堂で一人の子を中心に固まっていた女子グループの言葉が耳に入り
風早は思わず息を飲んだ。
「貞子だったくせにひどいよね。風早君とか三浦君とか…もてんのばっか狙ってない?
矢野さんみたいなんならわかるけどさ。なんていうの?体目当て?みたいなさ」
「あーでもそれじゃない?きっとなんでもさせてくれるんだよー。じゃなきゃたいしたことないく

せに、つか元が貞子のくせにありえないもん」
「だからさ、ちょっとがつんと言っとこうよ。いい気になってんの見苦しいよって。
そしたらミオもっかい三浦君に告ってみなよ。ミオ清楚系だし貞子より全然可愛いんだからいける
って。」

その集団が腰を上げたとき、風早は思わずその後をそっと追った。

一団が爽子に酷い事を言いながら詰め寄った時、
さすがに風早は口を挟もうと思い、一歩足を出した。

しかし風早が声をかけるより早く息を切らせた三浦が爽子とその一団に声をかけるのが見えた。


そしてすべてを見てしまった。


爽子と三浦が愛しそうに抱きあう姿に、いまだ癒えぬ傷が血をどくどくと流すのを感じる。

けれどどうしようもないのだ。
すでに爽子と自分の道はどうしようもなく離れてしまった。
風早翔太は彼女の人生の部外者になってしまったのだから。

二人に気付かれないようにそっとその場を離れ、
ふらふらと体育用具室の裏までくるとそこに座り込んだ。

「…っはは。」

何かすべて滑稽な気がして風早は苦く笑い出した。
笑いの発作が止まらず、痙攣したように昏い激しい笑いが喉の奥からわいてきた。

「ちょっと、風早。戸の前に座られるとこれ片付けられないんだけど。」

クリームのような甘い声が投げかける厳しい言葉に
風早が顔を上げるとそこには体育着姿のくるみが立っていた。
体育で使ったのであろうハードルを抱え 
怒ったような困ったような顔をしながら風早を見ていた


「…ごめん、胡桃沢。」

風早が少し体をずらすと くるみは一度ハードルをおき、用具室の鍵を開け、戸を開いた。
そしてハードルをもう一度もちあげそれを片付けた。
片付けながら風早に呟くようにくるみは言った。

「…泣かせるなって言ったのに。」

「え?」

いささか乱暴にハードルを片付けながらくるみは怒ったように言った。

「別に。独り言。」

その後はくるみは何も言わなかった。
無言でハードルを片づけ、それが終わると
やっぱり怒ったような困ったような顔をして風早を見ていた。

「…何で泣きそうなの?」

風早が思わずそう呟くように聞くとくるみはかっと頬を染め、鋭く言い返した。

「泣きそうなのは…風早じゃん!」

言葉を失った風早は、しかし昏い笑いを浮かべた。

「何言うんだよ。俺いま笑ってたんだけど?」

くるみはその言葉には何も応えず、代わりに体育用具室の鍵を投げてよこした。
少し軌道の逸れたそれを風早は上手に受け取るとくるみに疑問の目を向けた。

「それ、ピンに返しといてよ。」
「何で俺が」
「…そんな情けない顔で人前にでんの?風早。」

風早はくるみの言葉にぐっと息をのんだ。

「ここで思う存分笑ってけば。」

ぶっきらぼうな物言いに風早は心がほかりと暖かく軽くなるのを感じた。

「…さんきゅ。」

くるみはぷいと横を向いて返事もせずにスタスタと歩いていってしまった。
掌の鍵の冷たい感触を感じながら風早は用具室に入り、戸を閉めた。
そしてずるずるとおいてあったマットレスに座りこんで

泣いた。

爽子と別れた日、こっそり慟哭したとき以来はじめて思い切り、泣いた。

だいすきだった。
いまでも愛しい。
たぶんずっと愛しいままだ。

今はまだ君の幸せを赦す気にはなれない

けれど。

…そうする振りはできると思う。

風早は少しだけ口の端に笑みを浮かべた。

思う存分「笑え」か。

中学の時はいつも同じ顔で笑ってる子ってくらいの印象しかなかったけれど、
今の胡桃沢の方がな
んだかいい。

俺より男らしいじゃんって言ったら怒るかな。

風早は手の中の鍵の感触を感じながらもう一度微笑んだ。
それはずっと彼の顔に貼り付いていた乾いた笑いではなく
風早の本質を示す暖かな春色のものだった。
(終わり)

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