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「カプ注意:君に届け 金糸雀シリーズ(健人×爽子)」
君に届け 金糸雀2 月夜の海に浮かべれば(健人×爽子)


月夜の海に浮かべれば3(君に届け ※健人×爽子)

2010.02.10  *Edit 

-3-

裏庭に到着した健人は少女の一団に囲まれている爽子を見つけた。
爽子は頬を押さえ、爽子を囲む少女の一人が平手を構えている。

ー叩かれたのか。

そう理解した瞬間反射的に三浦は走り出していた。

少女たちの一群の中には三浦が先日丁重にお供をお断りした少女がいた。
爽子を平手打ちしたであろう子のやや後ろにいて爽子をきっと睨んでいた。
彼女たちは爽子を責めるのに夢中で三浦には気がつかない様子だ。
爽子の真正面で対峙する少女が声高に爽子をとがめた。

「貞子のくせに、すごいよね。風早の次は三浦?いい気なもんね」
「かわいそぶって、男の気を引くヤツっているよね。さいってー。ま、そんなんでしか気を引けないんだろうけどさ。」
「仕方ないよね「貞子」だもん。」
そしてクスクスという揶揄の笑い声


三浦がわりこんで何か言おうとしたとき爽子の静かな声がした。
「…健人くんは好意で心配してくれただけで 友情以上のものはないよ」

爽子の静かな声が三浦の心につきんと針を突き刺した。

…あー、ちょっと風早の気持ちわかっちゃっかも…。

”友情以上のものはない”

そう見せてたのは自分なのにけっこうその断言はきつい

気がついたら三浦の唇から力なく言葉が漏れていた。

「なんで爽子ちゃんが俺の気持ちを代弁すんの?」

その言葉に爽子と爽子を取り囲んでいた少女たちの一団が一斉に三浦に目を向けた。

どうしてという彼女たちのざわめきに耳を傾ける余裕は三浦にはなかった。

ただ、胸が痛かった。
彼女の「特別」なんてなれるはずもない
彼女の「特別」はずっと、あいつのままなんだ。
たとえ、二人の道が重ならなかったのだとしても

「爽子ちゃ…」
言葉を続けようとして呆然と自分をみる想い人と眼があった。

はっと三浦は我にかえった。

ここで俺が爽子ちゃんを問いつめて、おいつめて、どうするんだよ。
ただでさえ噂の刃はいつでもこの子を傷つけようと牙を研いでるのに。

三浦はへらりと軽薄な笑みを浮かべた。

「…友達っていうかさ、俺、女の子が不幸なのほっとけないんだよねー。爽子ちゃんにかまうのもいわゆる同情ってやつ?
まあ爽子ちゃんほど俺に構われたかったらおんなじくらい可哀想な子になってきなよ。」

へらへらと浅薄な言葉をを口にする三浦に
三浦に告白してきた少女が戸惑ったように少女の一人が鋭い口調で言った。
「か、かわいそうなの?だってこの人風早君弄んだって噂じゃない」

三浦はおかしそうに笑った。

「「貞子ちゃん」がそんなに器用なわけないじゃん。」

真摯すぎて不器用で、潔すぎて正面突破しか選ばないこの子がそんなに器用なわけはない。

三浦が言葉を続けようとしたとき爽子がゆっくりと口を開いた。
「私、…かわいそうじゃないよ。」
その眼は少し潤んではいたが、凛としていた。
そしてその熱を含んだ眼は三浦だけをみていた。
「ちょっと、貞子。私らのこと無視?」
そう囀る少女たちを軽く手で制すると爽子は息を呑む三浦に続けた。
「翔太君と別れて辛かったよ。でも自分で決めた事だから可哀想じゃないよ…。」

そして爽子の静かなゆらがなさに呑まれて言葉を失っている少女たちに目を向けて言った。
「弄んだとかいうのは翔太君の気持ちもないがしろにすることだからやめて。」

そしてくっと唇を噛む少女たちからもう一度三浦に眼を移した。

「翔太君を好きになった事は私の宝物だから、私はかわいそうじゃない。」

少し哀しそうに、静かだけど真摯に話す爽子にその場にいるすべての人間が言葉をなくした。

爽子がはぁっと大きく息を吐いたとき、その場の緊張の糸が途切れた。

三浦に告白してきた少女が気を取り直すように爽子を睨んだ。

「じゃ、じゃあ三浦君があなたに構う理由もないってことじゃない。三浦君聞いたでしょ?もーこの人に構うことないよ!」

そう言って三浦に眼を向けた少女はぐっと息を呑んだ。

いつもの柔らかで軽い笑みが三浦から消え、蒼い顔で切なく爽子をみつめていたからだ。

「みうらく…」
少女の声を三浦の低い声が遮った。

「-だからさーなんで爽子ちゃんとか君とかが勝手に俺の気持ち代弁しちゃうわけ…?」


三浦の唇の端には昏い笑みが浮かんでいた。

「下心なんてあるに決まってんじゃん。」
「健人君?」
「下心もないのに、志望校まで変えないよ。ピンにだって『お前のは志望校じゃなくて無謀校だな』なんていわれてんのにさ。」

三浦はおしまいの予感に怯えながらももう気持ちの流出を止めることができなかった。

はじめて必死になったのだ。勉強も、恋も。この恋は最初から実らせるつもりなんてない

けど、でも人魚姫が泡になってしまわないか心配で、せめて幸せになるところを見届けたかった。
ちくしょう、こんな風に伝えるつもりなんてなかったのに。

三浦は感情の奔流を止められずぎりっと唇を噛んだ。

次の瞬間その場にいる人間全員が言葉を失った。

三浦の両の眼からぽろぽろと涙がこぼれてきたのだ。
こらえるように声を殺しながらもぽろぽろと。

少女たちは顔を戸惑いながら見合わせた。
そして誰からともなくぼそっと声が漏れた。

「いこっか…」
彼女たちはそそくさとその場を離れた。

残された爽子は声もなく泣き続ける三浦をはっと見つめた。

そしてとりあえずハンカチでぽんぽんと三浦の涙を拭いた。
三浦は爽子の小さな手の感触にびくっと体を動かしそのハンカチをうけとるとゴシゴシと
自分の目を拭いた。

そして長い沈黙が訪れた。

「あの…」

何か言おうとした爽子を三浦は明るく遮った

「や~女の子は怖いね。可愛いけど怖いな~。そこが女子の可愛いとこだけどね。」

明るく切り出したものの、その言葉は支離滅裂だった。

「じゃ、あの、俺行くね。」

一刻も早くその場を去りたくて、三浦は歩き出しながらそう爽子に告げた。

かっこわりぃ…何で好きな子にこんな醜態さらさなきゃならないんだよ神様俺なんか悪いことした?

そう心の中で神に呪詛を吐く三浦の足を爽子の声が止めた。

「待って健人君。」

足を止めてふりむく三浦に爽子がほんのり赤らんだ顔でまっすぐに彼を見つめながら言った。
「あの、私はあんまりそういうことが得意分野ではないので、もし間違ってたら思い上がってるのかなと思うけど。」
「…」
「あの、健人君が私に親切にしてくれるのは、と、友達以上の感情があるという風に聞こえたのだけど。」

三浦は仄かな色気すら漂うその表情に目を奪われながら、どうしようもなくなって自棄のように言った。

「それ以外のどう聞こえんの。友達以上って言うか単純に好きなんだけど。」

痛みを引きずる爽子に思いをぶつけてしまったことへの後悔や、決定的な失恋が間もなく来るだろう絶望がないまぜになって三浦は混乱の極地にいた。
とにかくその場を去りたかった。
しかしそれはかなわなかった。

三浦は爽子の細く震える指が自分の服の裾を掴むのを
呆然とみつめた。

「えっと、離す気は…」
「ないです。」

再度沈黙が二人を覆った。

そして先に口を開いたのは爽子だった。
「私、もう、自分の」
「ストップ。それ以上はさすがの俺でもきついよ爽子ちゃん。」
そんな決定的な失恋の台詞なんかききたくない。

三浦はは無理矢理笑った。

「いいよ、別に好きになってとか無理なのわかってるから。俺たちは『お友達』それでいいじゃん。」

しかし三浦の言葉を流して爽子は言葉を続けた。

「私、もう自分の言葉を伝えないで自分の気持ちをわかってもらおうと甘えるのは嫌。」

かつて伝えても伝えても私の言葉は愛しい人から漏れていった。
そして彼は私を信じられなくなった。
大切な宝物を私は自分の手で壊してしまった。
それはきっと私がただ伝えるだけだったから。
全身で、どんな風に伝えたら伝わるかなんて考えなかったから。
言葉も態度も相手に届かせようとしなければ、ただの呟きと同じ。
宝物の恋はそのせいで哀しく砕けたけど、それだけは教えてくれた。

今度こそ、間違えない。

爽子は息をしっかり整えてひた、と三浦を見つめた。

「お友達は、私が…嫌…なの。」

三浦は意味が良くわからずただ、爽子の動く桜色の唇をみつめた。

「あの、情けない話なのだけど、私もたった今気づいたのだけど。」

爽子はこくっと息を呑んで続けた。

「私、健人君のことがすきなの。」

爽子がさらにたどたどと言葉を紡ぐと 三浦は信じられないと目を見張り、その後すぐ赤くなってしゃがみこんだ。

そして心配そうに声をかける爽子に眼を向け、おもいきりよく立ち上がるとぎゅっと爽子の華奢な身体を抱きすくめた。

「取り消ししない?」

心配そうに覗き込む三浦に赤くなって爽子はこくっと頷いた。

三浦は今度はそぉっと柔らかく爽子を壊さないように抱きしめ、幸せそうな溜息を一つ零した。

「ありがと。すごく、すごく」

爽子の頭上で何かを堪えるような三浦の声がした。

「-嬉しいよ。」

背中に感じる三浦の指先は少し震えていた。

爽子は胸の奥が締め付けられるように痛んだ。

この幸福な痛みをまた覚えることが出来たなんて。

自分の恋心は 初恋を殺したときに死んでしまったと思ったけど、またちゃんと再生してこうして人を恋うる事ができている。

あの宝物の恋はきれいな結晶になって私の中に咲いているんだ。

それがわかることが嬉しい。

だから。

どうか、お願いです。
あの人も。
私の大切なあの人も。

爽子は三浦の柔らかな包容に身をゆだねながら胸の前で祈るように手をくんだ。
(終わり)

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