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「カプ注意:君に届け 金糸雀シリーズ(健人×爽子)」
君に届け 金糸雀2 月夜の海に浮かべれば(健人×爽子)


月夜の海に浮かべれば2(君に届け短編※健人×爽子)

2010.02.10  *Edit 

-2-


ー月が。
窓の外から漏れる月の光が三浦を照らした。
受験勉強の合間に外を見上げると控えめな十六夜の月。
秋の冴え冴えとした空気に冷やされた月にほの白い顔が重なった。

健人は苦く笑いながらため息をこぼした。

あーこれが古典でやった「もの狂おしい」ってヤツか。

あの子に想いを伝えるつもりはない。

あの子と風早の水晶のように純粋な恋は
透明なまま砕けた。
純度と硬度の高い欠片はずたずたに二人を傷つけた。

あの子は折れた白い翼を抱えて血塗れであえいでいた。

だけど。

だけどあの子はそれでもその痛みすら受け入れていた。
希望も絶望も喜びも哀しみも、風早との恋がもたらしたものすべてから逃げることなく抱きしめていた。

その潔さが怖かった。
泡になって消えたおとぎ話の初恋の姫
潔すぎた人魚の姫に本気で泣いた幼い日の
痛みが爽子をみると鮮やかに胸に咲いた。

その痛みが恋の花だと気づいたのはいつだったのか。
懸命に眼を背けていたその事実は二人の恋が砕けたときに容赦なく眼前に現れた。

気づいてしまったその花は本人の意思を無視してぽろぽろぽろぽろと咲き続けて、今はもう押さえることもできなかった。

それでも言わないけどね。

三浦はもう一度くすっと笑った。

いいわけにすぎないかもとは頭の片隅をよぎる。
友達のラインを崩したくないのは自分のほうだ。

だってそれなら離れないですむ。

想い返してくれなくていい。
ただ幸せになるのが見たい。
その切実な想いはあの子がかけた優しい呪いなのかもしれないと三浦は思った。

そして心の奥底でそうだったらいいな、と呟いた。

………
「あの、今度、映画に一緒に行きませんか?」
目の前の少女は頬を染めながらそう恥ずかしそうに言った。

このごろ三浦は妙に告白されることが多くなった。
以前からそういうことがなかったわけではないのだけれど、自分に告白してくるのはどちらかというと華やかで恋愛もレジャーの一つと割り切っているようなタイプの女がおおかった。

しかし目の前にいるのは黒髪を綺麗にボブカットにした清楚でおとなしい印象の少女だった。色が白く、黒目勝ちのくりくりした瞳が愛らしい。
そういえばクラスメイトの何人かが可愛い子がいると騒いでいたような気がする。
くるみほどではなくても、もてるのだろうなと言うことが容易に予測できる容姿をしていた。
告白されるのはすなおに嬉しいし、フェミニストの健人にとっては答えてあげたいとも思う。
もしただの愉快な遊び相手として誘われたなら喜んで可愛い少女の相手をつとめただろう。

だけどこの子はそうじゃないよなあ。

三浦ははできるだけ軽薄に見えるようにへらりと笑った。

「あー…俺特別な子作んないんだー。」
くっと顔をあげた少女はすぐうつむいてしまう。

前はこういうタイプの子って俺に近づいてこなかったのになあ

三浦がそんなことを思っていると小さな声がした。
「どうして…?」
断られるとは思わなかったと言った語調に三浦はかすかな違和感を覚えた。

「だって女の子って全般的に可愛いじゃん。選べないだろー」

なおも軽薄そうな笑みを張り付けながら三浦は少女の様子を伺った。

「あの人…はいいの?」
「え?」
「三浦君、黒沼さん…の事よくかまってあげてるでしょう?」

…かまって「あげてる」?


三浦はぴくっと眉を動かしたが、少女はそれに気づくことなく続けた。

「黒沼さんが風早君に振られたのがかわいそうなんでしょう?でも仕方ないと思うの。…だって」
くすっと愛らしい唇をほころばせて彼女は言った。
「黒沼さんと風早くんじゃ、ねえ。」

…その笑顔は確かに可愛いけどさ。
自覚もしてるんだろうし、自信のある子は嫌いじゃないよ。

でもさ

爽子ちゃんならそんな風に人を見下したりしないよ 
そんな棘をくるんだ言葉で人を貶めたりしない。

あの子の言葉は水晶みたいに澄んでてきれいなんだ。

三浦は少し声が低くなるのを自覚したがかまわず言った。
「…つりあわない?」
「え…だって…」
「でも、俺の見たとこ、風早のが夢中だったみたいけどね。」

想いが激しすぎて大切な恋を殺してしまうほどに。

求めた同意が得られず不満そうに黙り込んだ少女に三浦は軽薄そうな笑みをもう一度張り付かせ言った。

「ま、爽子ちゃんのことは今かんけーないしね。…今言ったとおり、俺っていい加減だからさー一人の子に縛られたくないんだよね。」
「やっぱり、黒沼さんが…」

女の子ってなんでこう鋭いのかなあ。

三浦は内心のため息を押し殺した。

「だから、爽子ちゃんは友達だって。」

「そうですよね、三浦君と貞子さんじゃ似合わないもの。」

「貞子」とわざわざ言い換える無邪気な悪意が三浦を苛つかせた。

彼女が好意の欠片もなく蔑称としてその言葉を使うのがどうにも我慢ならなかった。

「君なら俺に、あってるの?」

三浦の言葉の険に気がついたのか彼女ははっと口をつぐんだ。

「爽子ちゃんは、俺の友達…だよ。」

三浦はきゅっとその苦い響きを飲み込んだだ。

「でも爽子ちゃんからはそーいう『人の悪口』みたいなのは聞いた事ないけど。」

少女は唇をかんで三浦を睨んだ。

三浦はもはや笑みを取り繕うこともなく短く「ごめん、俺行くよ。」
とだけ言ってその場を後にした。

三浦が思わぬ噂を耳にしたのはそれから一週間ほどしてからのことだった。

風早と爽子が別れた当初、無神経な悪意に彩られた噂が野火のようにひろまった。

「貞子は風早の同情につけ込んでつきあったくせに、ちょっと可愛くなったからって捨てた。風早は利用された被害者。」

その噂は爽子が毅然としていたことと、風早がその噂を耳にするたび、静かにそれを否定していたことで自然収束していった。しかし今なぜかそれに尾ひれが付いて広まっていた。

「風早の次は三浦とモテ男ばっか狙ってる」
「最初貞子だったくせに、ちょっと垢抜けたからっていい気になった。」
「見た目大したことない癖に大人しそうだから男は騙される」

それは無邪気な悪意などではない、明確な敵意の牙が潜んだひどい噂だった。

三浦はその噂を聞いてすぐに爽子の姿を探した。

「貞子?ああ、裏庭のほうに行くの見たよ。」
「サンキュ!」
教えてくれたクラスメイトに短く礼を言うと
三浦は裏庭に向かった。

(3へ続く)

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