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「カプ注意:君に届け 金糸雀シリーズ(健人×爽子)」
君に届け 金糸雀2 月夜の海に浮かべれば(健人×爽子)


月夜の海に浮かべれば(君に届け 短編 ※健人×爽子)

2010.01.10  *Edit 

金糸雀の続き 健人×爽子なので注意

-1-

夕焼けがきれいだなぁ。
爽子は目を細めて一日の終わりの荘厳な奏を聴いた。
受験生ということもあって、図書室で勉強し、いつものごとく花壇を見回ってから帰路についた。
辛い恋の終わりを経験したり、それに伴って様々な噂で貶されたりと平坦とはいえない数ヶ月間だったけれど。
それでも爽子はその辛さをも抱きしめていた。
爽子の辛さを我が事のように抱きしめてくれる親友たち、冷たい悪意が塗られた噂ではなく、爽子を信じてくれたクラスメート、そしてどうしても思考が沈んでしまうときに限って不思議に爽子を笑わせる名人の…友達。

胸が張り裂けて、世界が終わってしまうのかもと思うほどの辛さをそれでも抱きしめることができるのは、きっと周りのひとたちのおかげ。

爽子は金色の雲を見上げてため息をついた。

でも私に世界をくれた「彼」は…。

爽子との別れがあったあとも、風早はちゃんと笑っていた。
けれどその瞳の奥にはいつも乾いた昏さがあることに爽子も気がついていた。

けどもうそれを埋める手は私にはないのだ。
近づいて、その傷に触れて、癒すことができるなら
爽子はもう一度風早の隣にたつことをいといはしなかったろう。

しかしそうしてもまた繰り返す事がわかっていた。
傷つけて傷つけられて 互いのつけた傷をみてまた傷つく。

爽子はぎゅっと唇を噛んだ。
「爽子ちゃん」
後ろから声をかけられ、爽子が振り向くと
いつも彼女を笑わせる名人の友人、三浦がたっていた。
「今帰り?一緒に帰ろうよ。」

二人並んで歩くと陰が長く伸びた。
三浦は柔らかな声で爽子に言った。
「勉強教えてくれてありがと。-志望校までまだちょっと距離あるけどさ。」
爽子は意外そうな顔をした。

「え、合格圏だったよね?この前の模試で」

「あ、俺志望校変えたから。」

何でもないことのように言う三浦の志望校の名前を聞くとそれは爽子の目指す大学でもあった。
「わぁ、私もそこ目指してるんだよ」
嬉しそうに爽子は言った。
三浦は一瞬だけ爽子に目をむけると夕焼けの空に目を向けて言った。
「…あーそういえば、そうだったね。偶然!」
「い、一緒に合格できるといいね…!」
健人は少し目を細めて爽子を少し見てからすっと目をそらした。
「-うん、そーだねー…。」
(…あれ?今、目をそらされた?)
ちくんとした胸の痛みに黙り込んで爽子は立ち止まった。
そして三浦も黙りこんだ。 
そのまま三浦は無言で歩きだした。
少し遅れて爽子も歩き出す。
二人の影が長く伸びて手の先が繋がる

-手をつないでるみたい-

そう思った瞬間に羞恥が爽子を襲った。
(わ、わたしってば何を…?)
三浦は立ち止まった気配に振り返った。
「爽子ちゃん?」
赤く染まる頬が夕日のせいなのか、そうではないのかわからず三浦は再び黙り込んだ。
そのまま二人の間のことばは途切れた。
「あ、おれこっちだから…。」
いつものチャ☆も出ず、軽い笑顔も浮かべず爽子の眼すら見ずに健人は爽子に別れを告げた。
「あ、うん、あのさよなら…っ」
三浦はその声に少しだけ振り向き、ほんのり笑った。
「…うん、バイバイ爽子ちゃん」
爽子は夕焼けに染まる三浦のふわふわした金茶色の髪を見送った。

なんだか、元気なかったな…健人君。
受験勉強で疲れてるのかな

爽子は今度元気の出るハーブティーでも差し入れようと思いながら歩きだした。

帰り道、爽子は三浦のことを考えた。

「いい加減で軽い」それが一般の三浦評であったし、
それは否定仕切れない面もあるのだが、爽子はそれだけではないことをよく知っていた。
もとより爽子は三浦をいいかげんで軽い、などと評したことはない。
風早とつきあう前には ひととのつきあい方、笑顔のなりかたを丁寧に教えてくれる「師匠」であったし、
風早との激しい恋の嵐のさなかには思い詰めがちな爽子を柔らかくときほぐしてくれる 「優しい友達」だった。
(もっとも、風早とつきあっている間には風早が彼とつきあうことにあまりいい顔をしないことに
さすがの爽子も気づいていたので一定の距離は保つように心がけてはいた。)
そして 風早との宝物の恋を終わらせて、折れた翼で慟哭する爽子にさりげなく手を伸べてくれたのも三浦だった。

傷を自分のことのように思う感受性の強い千鶴や、
何もかもわかったうえで共に痛みをわかちあおうとしてくれる優しいあやねに、
これ以上痛みを背負わせたくなくて爽子は涙のとめかたを必死で覚えた。

それを見抜いて泣かせてくれたのは三浦だったのだ。

あの何もかもを赦すような荘厳な夕暮れの海を見たとき
爽子はようやく自分を赦せる気がした。

愛しいひとを傷つけるしかできなかった自分
何もかもをくれた、大切なひとの笑顔を奪った自分

この海のようにすべてを受け入れる寛恕があったなら、
風早の激しい熱情を受け止めることができていたのだろうか。

けれど爽子は違うと思ったのだ。
自分の心が彼の望むまますべてを与えることは違うと囁く声に爽子は逆らうことができなかった。

あんなに大切なひとだったのに。

爽子はひっそりと自分の狭量を責めた。
ずっとずっと責め続けていた。

けれど、卑小な自分すら柔らかく赦す海を見たとき、爽子も自分を赦そうと思った。

私があがいても、風早君ががんばってくれても、仕方のないことだってあるんだ。

小さくて、臆病で、不器用な私でしかないから、私は私を赦そう。

夕暮れの海はひたすらに優しかった。

健人君はあの海みたいだな。

爽子はなんとはなしにあの蒼と赤の混じりあう海を思った。
(後編に続く)

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