かなりあ

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
*Edit TB(-) | CO(-) 

「カプ注意:君に届け 金糸雀シリーズ(健人×爽子)」
君に届け 金糸雀(健人×爽子)


金糸雀 (君に届け 短編※カプ注意)

2009.12.22  *Edit 


t02200044_0400008010337761417.jpg

に 投稿します 過去作品だけどブログには初掲載

※注意※
これは 某スレの「風早と爽子が別れてしまった」お話にのっかって書いたものです。
だから風爽がくっついてないんじゃ読めないよ!って方は読まないほうがいいと思います。
風爽は一度カップルになりましたが、色々あって別れました。
その前提での「健人×爽子」です



-1-

「爽子ちゃん、じゃんけんしよ、はいじゃんけんぽん。」
突然三浦にそんな事を言われ、戸惑いながらも反射的に爽子はパーをだした。
三浦の出したのはチョキ。
三浦はにこっと嬉しそうに笑って言った。
「よし、爽子ちゃんの負け。だから今度の土曜午後から俺に付き合ってよね。」





爽子が風早との嵐のような恋に終止符を打ったのは少し前のこと。
爽子は少し落ち込んだようにも見えたが、もともと華やか、とか明るい、
と言ったタイプではないため顕著に見える変化はなかった。
減っていた笑顔も少しずつ戻るようになってきていたし、泣くことは全くなくなった。
周囲はもう爽子は辛い別れから立ち直ってのだと理解した。
極近い関係のあやねや千鶴でさえ爽子の涙を見なくなった事で
なんとなく爽子は大丈夫と思うようになってきていた。
元々彼女たちが爽子のどたん場での芯の強さを知っていたことも影響していたのだろう。

しかし三浦だけはその笑顔に哀しみの海がたぷんとたゆとうていることを知っていた。

だって三浦はずっと爽子を見ていたのだから。
爽子が風早と付き合い始め、小さな白い蕾がやがて満開になっていく様をずっと眩しく見ていたのだから。
その花が激しい恋の嵐で無残に傷つき散っていく様を切なく見ていたのだから。

泣かないで
でも無理に笑わないで

いつしか三浦はそう胸の中でそう願うようになっていた。


強引な約束は強引に果たされた。
土曜、午前中の授業が終ると爽子は三浦にひっぱられるように連行され
気が付いたら海へ向かう電車の中だった。

駅の売店で買った昼食代わりのサンドイッチを電車の中で口にしながら
(爽子はあんまり行儀良くないなと思ったが、初めてのそんな経験は少し楽しかった)
爽子は三浦に聞いた。
「なんでいきなり海に行くの?」
同じくサンドイッチをほおばりながら三浦が答えた。
「あ、知らないんだ爽子ちゃん。今の時期の夕方の海は一見の価値があるよー。」

その言葉通り晩夏の夕焼けに彩られた海は荘厳なまでに美しかった。
暮れかけた藍色の空が薄く溶けた静かな海にその日の終わりを告げる赤い太陽も身体を休めるように溶けていく。
すべてを包み込むように海は優しかった。
「う、うわあ…!すごいね…!綺麗だね!」
「爽子ちゃん 手を出して。」
「手?」
爽子が手を差し出すと三浦はくすっと笑ってかぶりを振った。
「違う違うこう。」
三浦のするように掌を上に向け、不思議そうな顔で爽子は手を差し出した。
その掌に三浦はざらざらと何かを乗せた。
それは色とりどりの金平糖だった。
星の欠片のようなその美しいお菓子に爽子は思わず微笑んだ。
「…かわいい、ね。」

昔お父さんにおねだりしたなぁ。
魔法のお菓子みたいにキラキラして見えて食べるたびドキドキしたっけ…。

爽子は遠い昔を思い出し懐かしさにほんのりと切なくなった。
「健人君のポケットは、魔法のポケットみたいね」
「あ、ばれちゃった?実は俺魔法使いだからさ。」
その言葉にきょとんとしてから、ふふふっと爽子は笑った。
それはこの頃の爽子の涙を内包した哀しい微笑ではなく、本当の笑いだった。
三浦は爽子が心から笑ってることに安心した。
その笑いはそれでもいまだ癒えぬ傷の疼きが見える痛々しいものではあったけど。
爽子は掌の砂糖でできた星を一つ口に運んだ。
甘さが口の中に広がりやがてそれは儚く消えていった。
それを繰り返すうちに爽子はどうしてだかぽろぽろと涙がこぼれてきた。
風早と別れて以来、友達の前では泣かないようにしていたのに。
泣くと大事な友達が自分達の事のように心を痛める。
あやねも千鶴も爽子がどんなにこの恋を大切にしていたか知っているからこそ
爽子の痛みを自分たちの事のように哀しんでくれる。
そのことに爽子はどれだけ救われたかしれないけれど、
この張り裂けそうな胸の痛みをこれ以上友達にまで与えたくなかった。
だからいつからか、爽子は誰かの前で泣くことをやめた。
涙のこらえ方はマスターしたと思っていたのに。
「ご、ごめんなさい、今!止めるから!」
謝る爽子の頭をぽんぽん撫でて三浦は言った。
「この金平糖は魔法使い作の金平糖だから泣けてくる事もあんだよ。」
だから泣いて良いんだよと三浦は穏やかに続けた。
その言葉に爽子の涙腺はこらえきれず崩壊した。
ひとつ金平糖を噛むたびに泣いて泣いて泣き止む頃にはたくさんあった星のかけらはほとんど消えていた。
爽子が鼻をぢーんとかむと三浦がうわ、色気ないなーと軽く笑った。
その言葉に爽子も微かに笑った。
爽子はぽつりと言った。
「健人君、私、翔太君がだいすきだったよ。ううん、きっとずっと大好きなままだと思う。」

あの太陽みたいな笑顔はもちろん、
内在する正義感、人を愛し、人に愛される健康で眩しい魂、
豊かな感情と表情、子供のような我侭さですら好きだった。
すべてが煌いていて憧れだった。

風早の開いてくれた扉で爽子の世界は少しずつ光で満ちた。
それはもう爽子の一部になって魂に染み込んでいる。

「だいすきで大切で特別で、ずっとそれは今でも変わらないのに、
どこで私まちがっちゃったのかなあ。」

いつからか爽子のだいすきで大切な笑顔が風早からどんどん消えていった。
自分も風早の前でどんな風に笑っていたか思い出せなくなっていった。

「まちがわなければ、翔太君を幸せに出来てたのかな…」

爽子の髪が潮風に弄られた。
そこには生真面目で不器用な、いとけないだけの少女はいなかった。
三浦の眼前にいるのは恋の迷路で迷い、傷つき、哀しみを知った清冽な少女だった。
儚く大人しい外見にほのかに凛とした印象がついて、
純粋なだけではない清廉さがあった。
三浦は眩しそうに眼を細め、爽子をそっと見た。
そしてたぶん同じように、眩しい思いでこの少女をみつめていた恋敵を思った。

手の中で大切に握りしめすぎたら柔らかな小鳥は死んでしまう。
風早も同じように柔らかで無防備な恋を抱きしめすぎて殺してしまったんだな…。

風早にもそれがわかっていたから、恋だけじゃなくこの子まで壊す前に、
愛し過ぎて壊してしまう前に別れを選択したんだろう。

「まちがいだけ考えてても仕方ないよ。」
ケントは少し真面目に言った。
「うまくいってる恋人同士が全部正解だけ寄せ集めた結果なわけじゃないじゃん。」
爽子は三浦を見た。
「…爽子ちゃんは風早をこれ以上壊したくなかったんだよな?」

別れる直前の二人はとにかく危うかった。
爽子の手を離すくらいなら、自らの手をちぎりかねない風早と、そんな風早を見ていられないくせに望まれればそのまま共に闇に飲み込まれそうな爽子

白く光る刃を抱き合うような真剣でとても危うい恋をしていた。
そんな二人の雰囲気に気付いていたのは三浦だけだった。

だから三浦は下心をぎゅうっと胸の奥に殺してただ爽子を笑わせ続けた。
そうしないと永遠にこの清廉なひとに会えなくなるような気がして怖かったのだ。

でも風早と爽子は踏みとどまった。
彼らは別れという救いを選択した。

「爽子ちゃん、偉かったよ。…偉かった。」

三浦はまた爽子の頭を優しく撫でた。
爽子はまたぼろぼろと泣けてきてしゃくりあげながら微かに残った掌の小さく美しいお菓子を口に運んだ。
甘くて口の中ですぐ溶ける星の欠片は、どこか不器用で真剣で傷つけあうしかできなかった初恋に似ていた。

この恋は宝物だった。
こんなに燦く季節にはもう二度とめぐり合えないだろうと思うほどに大切だった。

けれどもう二度と戻れないと、もう戻る事はできないと
大切な宝物の恋を爽子はその手で殺した。

「爽子ちゃんは男らしいからなあ。」
「おと…っ」
きょとんとする爽子に三浦はにっと笑った。
「俺より、風早より男らしいからなぁ。」

風と爽子が別れたという話は野火のように広がった。
本人たちはそのことについて全くの沈黙を守ったが風早の非凡なるカリスマ性はそのまま周囲の爽子への敵意に転じた。
以前のように見下される事はなくなっていたが、地味ながら清らかで純粋な爽子の魅力が他の人間へじわりと広がっていたため「可愛くなっていい気になった爽子が風早を弄んだ」などと心無い噂すら広がっていた。爽子を直接知るクラスメートや友達は決してそんな事は信じなかった。しかし風早の爽子への執着が誰の眼にも明らかだった事、そして風早が好きだった少女たちの爽子への潜在的な嫉妬心があった事が爽子を傷つける噂を広げた。
爽子はそれでもまったく何も語らなかった。
ひそひそと背後で交わされる噂話を肯定も否定もせずに昂然と頭をあげていた。

あんな事を言われて腹が立たないのかと千鶴が怒り泣きながら爽子に訴えた事があった。
爽子はそんな千鶴の友情に涙しながらも
『…きっと説明しきれないから』
と繰り返した。
爽子はふと、三浦を振り返った。
涙はもう消えていて、何もかも洗い流したようにすがしく微笑んでいた。
「-健人君、ありがとう。ここに連れてきてくれて。」
ふふっと笑って爽子は問うた。
「どうしてここに連れてきてくれたの?」
しばらく考えてから三浦はそーだなーときりだした。
「人魚姫って理不尽じゃない?」
「…にんぎょひめ…?」
「あれってさ、絶対王子が大馬鹿だったのが原因なのにあいつちゃっかり王女様と結婚して幸せになってんだぜ。人魚姫ひとりが全部背負って泡になっておしまいってなんか納得いかないんだよなあ。」
「あ、あの…?」
「ちっちゃい頃から『女の子は幸せであるべし』って思ってた俺としてはあの話許せないんだよなあ。」
何度絵本を読んでもらっても人魚姫の末路が気にいらなくていつも母に文句を言った。
何がなんだかわからず不思議な顔をしている爽子にもう一度三浦は笑った。

俺は君を泡と消える人魚姫にしたくないんだ。
言葉を持たず、誰をも責めず泡になる事を選んだ潔すぎる彼女のようにしたくない。

いいんだよ、俺を好きになってくれなくてもいいんだ。
俺は君の大好きなあいつみたいな笑顔も持ってないし、欠片もあいつに似てないし。
ただ、そんな哀しく笑わないでほしいだけなんだ。
ただ、君にまたあの蕾が綻ぶような笑顔を見せてほしいだけなんだ。

三浦は不思議そうに自分を見る爽子の頭をぽんぽん、ともう一度撫でた。
「独り言。ただ綺麗だから誰かと見たいなと思ってさ。たまたまスケジュールのあいた女の子がいなかったんだよ。あ、男は却下ね。…あーもっと俺の仔猫ちゃん達を増やさなきゃな。」
仔猫ちゃん…?
ガールフレンドを指す、いささか古いその表現の意味が通じず爽子は首をかしげた。
そして何を想像したのかぼそっと いいなぁー…仔猫ちゃんの集団…とうっとり呟いた。
三浦はその様子に噴出した。
「言っとくけど、別に俺ほんとの猫に囲まれて生活してるわけじゃないからね。」
「えっそうなの!?」
見たかったのに…ともらす爽子を三浦は気付かれないようこっそりとみつめた。
幸い海に眼をやる爽子は三浦の視線に気付かないでいてくれている。

大丈夫、俺は友達のラインを超えたりはしないから。

激しくて幼くて純粋すぎた恋の刃に傷つき、全身血に塗れて慟哭する爽子に
三浦はとても自分の想いをぶつける気にはなれなかった。

晩夏の少し寒い潮風に爽子が小さく震えた。
三浦はふっと笑って言った。
「そろそろ帰ろっか。ほんとうの星も出てきたし。」
いつの間にか藍色の空はすっかりその色を濃くし、
遠くに見える灯台に灯が点り始めていた。
爽子は頷いてもう一度、連れてきてくれてありがとうと笑った。
それは三浦がもう一度みたいと希んだ蕾がやんわりと綻ぶような笑顔だった。
(Fin)
スポンサーサイト


にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


⇒ この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 ◆Home  ◆Novel List  ◆All   ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。